緊急事態宣言と自粛。私が思うこと。

4月7日に緊急事態宣言が発令。7都府県に住む人たちに対して外出自粛、営業自粛、在宅勤務などのより強い要請が出されました。そして、4月16日には全国に緊急事態宣言が発令されました。志村けんさんや岡江久美子さんの死は本当にショックなことでした。

全世界に広がるコロナウイルス感染。ニューヨークの例を見ていてもまったく油断はできません。ニューヨークやパリでは早くも「命を選別する」病院も出てきていると聞きます。人工呼吸器の数に限りがあるため助かる可能性の高い方に処置を施し、可能性の低い人の治療を断念する。そんな事態が発生しているようです。そんな医療崩壊をなんとしても防ごうというのが今回の宣言です。

しかし日本は極端にPCR検査を受ける人数が少なく実態は把握できていません。公式発表の100倍の感染者が実は存在していてもまったく不思議ではありません。今回の緊急事態宣言を機にウィルスの感染を食い止め、なんとか事態が好転することを望みますがこのCOVID-19の感染力の高さを見ると楽観視できないのが正直な気持ちです。

そして何より国からの補償が4月末の法案で決まりますが、どこまで日本の産業を守ることができるのでしょうか。営業自粛、経済活動の自粛を余儀なくされている多くの事業者、企業、事業主のことを考えます。首相も会見の中で「収入の7、8割以上の減額、最悪は無収入の状態の方もいると思われます」という趣旨の発言をしています。1ヶ月間、仕事をしなくても生きていける人たちは限られます。1ヶ月の間に倒産、失業した場合その後の職も探さなくてはいけません。その間の暮らしもあります。医療崩壊を止めることが最優先ならば、補償は必須です。

ウィルスで命の危険に晒されるか、はたまた経済的困窮で命の危険に晒されるか、国民に選ばせているのが現状です。どうにも食べていけなくなったら人々は働かざるを得ません。店を開けざるを得ません。誰にもその人達を否定する権利はありません。

でも今の自粛の雰囲気は異常です。新居浜市の小学校で、運送業の保護者が新型コロナウイルスの感染拡大地域へ行き来するという理由から、児童に自宅待機を求たり、県外ナンバーの自動車を煽ったり、公園閉鎖、登山禁止、ジョギングもなかなかできないという話も聞きます。病院が感染の可能性のある人を拒否したという話もニュースで流れていました。希薄化した社会の中で起きたことにより、ますます人を避ける傾向に拍車をかけているようにも思います。孤独な人はますます孤独になり、どんどん精神的に追い詰められていきます。

また1ヶ月の間に大きな効果が現れ、ピークの勢いを和らげ事態が収束していったとしても完全な収束までには時間がかかると思われます。私たちはこのウィルスとどう付き合っていくべきなのでしょうか。来年の今ごろに沈静化しているという保障はあるのでしょうか。政府は今年の五輪開催に向け粘りに粘りウィルス対策が後手にまわり、感染を拡大させた感が否めません。まだほんの二ヶ月ほど前まで今年の開催を強く主張していました。そして事態が急速に悪化するやいなや今度は五輪中止をなんとしても避けるべく来年の夏開催を早々に決定しました。五輪ももちろん大事です、でも未知のウィルスとの闘いに対して見積もりが甘いのではと危惧します。

COVID-19との決着の仕方はいくつか考えられます。最善で最良のパターンは1. ウィルスが消滅すること。世界中の人々の努力によって感染を最小限に抑え、ウィルスが死滅するまで追い込む。それを願うばかりですがもしこれが可能だったとしても早くて半年から9ヶ月はかかるのではというのが大方の予想です。もしそれが叶わなかった場合、他に考えられるのは2. 約1年〜1年半後を目処に完成すると言われるワクチンが出来上がるか、3. 全世界人口の6〜7割がウィルスに感染することで集団免疫を持つか、おおよそこのあたりだと思われます。1918-1920年に大流行したスペイン風邪は収束までに3年の期間がかかりました。未知のウィルスなのでこの他に何が起こってもおかしくはありませんが、可能性として高いと思われるのがこの2、3の選択肢だと言われています。その場合、長期的な戦いになることが予想されます。そしてそうなった場合私たちはどこかに線引きをして経済活動をしなくてはいけません。人との接触を抑え、外出自粛をし、ウィルスの蔓延を極端に減らしたところでその間に何百万人と失業者を出し、それに伴う自殺者や貧困による死者を出したら意味がありません。

どこかに線引きが必要です。この緊急事態の1ヶ月の間に世の中にそういった議論が行なえる空気ができることを望みます。もちろん事態が想定より軽くすんで日常が戻って来れば最高ですが、「万が一の長期戦に備え、私たちはどうやって生きていこうか」という議論をして仕組みを考えることはしておくべきだと思います。

悲しいですが今回のウィルスで死者はある一定数生まれています。いまだ世界中で増えています。もしかしたら私たちも感染しているかもしれません。でも感染者の9割以上が確率的に生き延びています。そして無症状で終わる人も相当数います。だからこそ怖いウィルスでもあります。専門家の中には季節性のインフルエンザと同様にこのCOVID-19も地球上に存在し続け、流行と収束を毎年のように繰り返すことになるのではと予想する人もいます。

今回、経済活動の自粛が起きたことで汚染された大気や海水が劇的に改善され、動物たちにとって非常に好環境が生まれているといった報告が世界各地でなされているそうです。私たちがどれだけ声を大にしてこの地球環境を守ろうと呼びかけても実現しないことが、人類の生命の危機により易々となされるのはなんとも皮肉なことです。今回のウィルスが人間の「愚」を少しでも改め、「善」を伸ばす方向に作用することを願います。