遊び場通信21号 2014.7.10

  • わくわくドキドキと安心、安全
  • さんま(三間)のはなし
わくわくドキドキと安心、安全

(2014年6月22日の遊び場ブログより)
あなたは子ども達と関わる時、どんな思いを持って接していますか?

「未来に希望を持ってほしい」、
「どんな環境でも強く生き抜いてほしい」、
「あきらめないで頑張って!」、
「可能性は誰にだってある」、
「みんな助け合って思いやりを持って生きていってほしい」・・・

でも、子どもたちが実際にのびのびと遊び始めると、違う感情が湧き出てくる。
「あぶないんじゃないの?」、
「ケガとかしないのかな?」、
「友達とケンカしてる。どうして仲良くできないの!」、
「棒は振り回さないで!」、
「危ないから走らないで!」、
「どうしてお母さんの言うことを聞かないの!」・・・

思いはあるけど、現実に接する時は目の前のことが心配でそんなことを思う余裕はないという人も多いんじゃないだろうか。現に私もそんな思いに悩まされた親の一人なのだ。

でも、子どもの遊び場環境を少し考え、みんなで話し合い、同じ思いの人を増やすことで、その矛盾を減らすことができるのだと、ある時気づいたのだ。

「ココだけは泥だらけになってOK!」、
「木に登ってもOK!」、
「おままごとで雑草をちぎっても、つぶしてもOK!」、

いつもの遊び場より、ちょっとだけ禁止事項が少ない場所。それで、その遊びをいつも大人が見守ってくれている場所。「仲間同士ケンカが始まっても1対1で真剣にケンカするなら見守りましょう♪」っていう雰囲気がある場所。

そんな場所で子どもを遊ばせていると親も楽しいし、子どもも のびのびとしてくる。

しかし、そうした場所が日本全国どこに行っても少なくなっているのが現実だ。近所の繋がりも、家族の繋がりも求めない人が増えれば増えるほど、ますます子どもがのびのびと遊べる環境は少なくなる。

社会の変化と同時進行で子どもの育つ環境も変化してきたことを子育てしながら見つめてきた23年。良いのか悪いのか??悩みながら決断したのが今の活動だった。

話は変わるが、今回できたばかりの「ロープウェイ」がなぜかすべての子どもに大人気だったんですが、その理由をちょっと考えてみた。新しいから?面白そうだから?・・・

子どもが好きなものは「ちょっと危険でちょっとわくわく」を感じられるものなんじゃないかと思っている。目新しい遊具というのも人気の理由ではあるが、今回の「ロープウェイ」には未知の危険があった。だからたぶん最初に乗った子はみんな不安でいっぱいだったんだと思う。それが「ちょっと危険でちょっとわくわく」なのだ。

でも、何度も乗りこなすうちに、「今度はスピードを上げてみようか!」「今後は中間地点でジャンプして降りてみようか!」とまたまたチャレンジが始まるのだ。このチャレンジには終わりがない。そんな冒険心のかたまりのような子どもたちには創造力もあるし、能動的な力も育っているに違いない。だから外でのびのびと遊ぶ経験が少ない子と多い子では「生きる力」が違ってくる。

でもそのこととは矛盾する「心配」は親にとって子どもの遊びには常に同時に考えないといけないことなのだ。「成長」と「心配」をバランスよく感じつつ子どもを遊ばせ、危機管理能力の成長を見ながら、親は少しずつ不安を減らしていく。そして、中学生になる頃には、外での遊びの「心配」を親がすることはなくなり、高校卒業(大学卒業)と同時に彼らは自分の力で歩きだすのだ。

さんま(三間)のはなし

oct02_a24
むかしむかし赤い夕陽が地平線に沈む頃、野山で遊び疲れた子どもたちは、お母さんが七輪で焼いた「さんま」の焼ける匂いに誘われて、急いで帰路に着きましたとさ・・・めでたしめでたし

そんな昔話に出てくるような風景が、昔は日本中どこにでもありました。

昭和の子どもたちと今の子どもたち・・・

高度経済成長とともに便利なものがどんどん開発され、生活が豊かになったことは嬉しいのですが、その反面、子どもの育ちには大きな影響を及ぼしています。

その一つが「さんま」の減少なのですが・・・

「さんま」といっても海に泳ぐ「さんま」ではありません。

「三間(さんま)」とは子どもにとっての「時間」「空間」「仲間」が少なくなっているという問題のことです。塾やスポーツクラブでなかなか遊ぶ「時間」が取れないこと。空き地や野山で遊ぶこともできなくなり、公園でも禁止事項が増えて遊べる「空間」が減っているということ。異年齢で遊ぶことが減り、大人数で遊ぶ子どもも減ってきて、特定の決まった友達と遊ぶ子が増えていることから、遊び「仲間」が減ってきている問題のこの「3つの間」の問題をどう解決すればいいのかということなのです。

でも、この問題を解決することは、よく考えればそれほど難しいことではないはずです。

地域の大人がその問題を理解し、地域の子どもと関わるように心がけ、親も子どもの遊び時間をちゃんと考えながら、塾やスポーツクラブのスケジュールを組み立てて、見守ってくれる人に感謝の気持ちを忘れない。みんながそうすれば問題はすぐ解決するはずなのですが、なかなか理想どうりには社会は回っていないようです。

それは、大人の側にも「三間(さんま)」が少なくなってきているからではないでしょか。

日々の仕事に「時間」を追われ、安らげる「空間」を築くことができずに、お互い理解し合える「仲間」も作る余裕がなくなっていく。そして雇用問題、家庭不和など今の社会は一つ歯車が狂うと坂道をどんどん下ってしまいます。そして、心に余裕がないと、子どもがのびのびと遊ぶさまざまな行動に優しいまなざしをおくる余裕すらなくなってしまいます。

今後も時代はどんどん変化し続けます。

子どもたちの「時間」を奪うネットコミュニティーはますます深刻な問題へと発展するでしょう。そのため人と人との関わりを避け「ネット」社会に気軽な幸せを求める人たちが増えていくことは避けられないのです。

ただ、人生の最終章で誰もが求める幸福とは、決してバーチャルな世界には築けないことだけは明白な事実です。

信頼できる「仲間」がいて、あったかい「家庭」という「空間」があって、それを守るために「時間」を有効に使う。その為には「手間」をかけて夕食を作ったり、子どもの話しにじっくり耳を傾けたり、夫婦間の問題も1本1本紐解くように、話し合いを重ねていくしかありません。

「リアル」社会での関わりはとてもめんどくさくて「手間」がかかります。

それでも最終章で「リアル」社会での幸福を求めるのであれば、「手間」をかけ、自分と家族の幸福を築く努力をしていく方が賢明な選択だと思います。

【編集後記】
「子どもの遊び」をキーワードに活動を続けていて思うことは、社会の問題がすべて子どもの育つ環境に繋がっているということでした。その為、「遊び場」の問題一つを解決する為にも、さまざまなな問題が関わっていて、簡単には前に進まないこともわかってきました。
それでも、1歩1歩前に向かって歩いていけば、必ず扉が見えてくると信じてこれからも頑張ります。応援よろしくお願いします<(_ _)>