「森のようちえん」を知っていますか?

1950年代半ばデンマークに誕生した『森のようちえん』。

ドイツの森のようちえんでは1990年代半ばからその数が急激に増え、環境教育に熱心な両親のみならず、若者世代を取り込もうと懸命な環境行政や、発育への影響に関心を寄せる科学者からも大きな注目を集めている。

森のようちえんのコンセプトの1つ「五感を使った自然体験」は、環境教育の分野では、「環境市民」を育てるための重要なプロセスだとされている。

ドイツでは、1990年代半ばからその数が増え、現在700以上の森のようちえんがある。

森のようちえんにはいろんなタイプがある。
①1年中森の中で遊ぶオーソドックスなもの
②普段は普通の園舎で子どもたちを遊ばせて、週1回など定期的に森の中へと出かけていくタイプ
③午前中は普通のようちえんに通っている子どもが、週に1・2回、午後だけ森に通ってくるタイプなど。

また、森のようちえんの園児は、普通1グループで10人から15人。1グループあたりに、教育を受けた先生が1人、研修生や親の有志がアシスタントとして1人か2人つくことが多い。
日本でも今、森のようちえんの重要性が見直され、全国で広がりを見せている。

五感を使った自然体験の重要性

森のようちえんに通った子どもは、普通のようちえんを出た子どもより発育(特に学習の能力)に遅れが出るのでは、と心配する声もある。
しかし、ダルムシュタット教育大学教授ローランド・ゲオルゲス (Roland Georges)が行った調査によれば、両者で発育レベルに差はほとんどなかった。学校に入ってからの成長を見てみると、森のようちえん出の子どもの方が、学習面、社会行動、身体の能力とさまざまな面で成長がいい、という結果が出ている。

森の中で遊ぶことで培われた想像力、集中力、我慢強さ、精神と体のバランス、社会性などが子どもの後々の成長にとって大切であることを、この学術調査は肯定している。
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鎌倉にある自主保育なかよし会(神奈川県鎌倉市)

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なかよし会 創設者 相川明子著

貴重な鎌倉の自然を満喫しながら、四季を通じて薄着・はだしで里山(山崎の谷戸)や海で遊ぶ保育グループ。 1985年に創設され、今年で28年目。特定の園舎は持たない。保育者と数人の母やときには父が保育当番に入り、子どもたちに付き添う。 保育当番に入る際の心得は「口はチャック、手は後ろ」 子どもたちは、親が耕した畑の野菜を収穫したり、泥んこになって生きものや自然とふれあいながら、思い切り遊んでいる。

映画『子どもの時間』のいなほ保育園(埼玉県桶川市)

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いなほ保育園園長 北原和子著

O歳から6歳の子どもたちおよそ100人。山羊や馬など・・・自然に囲まれ、火や水とともに生きている。その姿を5年あまり撮影して、「子どもの時間」という映画はできたとのこと。
冬は毎日焚き火にあたり寒さをしのぎ、垂れた鼻水を汚れた手でぬぐった汚い顔をしている子ども。土の上をハイハイする赤ちゃん。まるで昭和初期にでもタイムスリップしたような保育園。園舎には冷暖房はなく、ガラス戸はあるものの開けっ放し。

それでも、子どもたちの顔は生き生きとして、たくましい。昔の子どもの顔つきを彷彿させる。

この保育園は子どもの感性を生かす保育をすることで有名で、無認可なので保育料も予想以上に高いが、入園させたい家族が全国からやって来るという。

山村に響く幼児達の歓声
森のようちえん「まるたんぼう」(鳥取県智頭町)

93%が山林の、人口8000人弱の山村といえば、通常は高齢化率が高く、人の姿、とりわけ子どもの声など聞こえないのが一般的だ。

しかし、ここ智頭町(ちづちょう)は違う。

晴れの日も、雨の日も、雪の日も、平日は毎日、町のどこかの森で子ども達の楽しそうな声が響いている。それは「森のようちえん」があるからだ。

智頭町の森のようちえん「まるたんぼう」は2009年にスタートした。始めたのは西村早栄子さん。鳥取県の職員であるが、育児休業中に自分の子どもを森の中で育てたいと活動を始めた。

代表の西村早栄子さんは1972年、東京都町田市に生まれた。東京生まれの東京育ちだ。東京農大の林学科でマングローブに関心を持ち、琉球大学修士課程に進学。その後、さらに京都大学農学研究科熱帯林環境学講座(博士課程)に進む。京大在学中に1年半ミャンマーに留学。学生結婚し、2001年に長女が誕生した。

そんな森のプロでもある西村さんが、「森のようちえん」を知ったのは『デンマークの子育て・人育ち』という本を読んだこと。「幸福度一番の国では、こんな子育てがされているんだ。森のようちえんを自分もしたい」と思ったことがきっかけだ。

ミャンマーでの生活も大きな影響を与えている。牛車や馬車が車代わり。「ミャンマーでの一年半、ビルマ人もいかないようなデルタ地帯で研究していたので、けっこうサバイバルというか生きる力が付いたように思います。ミャンマーに比べて今の日本の子育ては全く子どもをスポイルしています。日本は殺菌しすぎ。」と指摘する。

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少子高齢化社会における
「森のようちえん事業」の可能性

「まるたんぼ」の西村さんは東京出身、私は愛知出身なんですが、私たちのようにまだ自然がいっぱい残っているフィールドで子どもを育てることに憧れを感じる人が今増えているように思う。

昨年9月に「まるたんぼ」に見学に行った際、「震災の関係からか、西日本で子どもを育てたい人が増えている。」という話になった。

それはなぜなのか考えた時、「自然」+「安全」+「人との関わり」+「子育て」が可能な場所だからではないかと行きついた。それに「仕事」がプラスすれば、最高の住みかとなるが、この問題はなかなか解決しそうにない。

それでも過疎地の少子高齢化が深刻になっている今、そうした問題を解決する手段としての「森のようちえん」という形は有効なのではないかと考えている。一般の保育園、幼稚園という形にプラスして「森のようちえん」という選択肢があってもいいし、本格的な森のようちえんに認可保育園と同じ金額で通わせることができたら、きっと愛媛に移住してくる人も増えるのでは・・・子育ての未来を見据えて、これからも模索していきたい。

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鳥取県智頭町の「100人委員会」

西村さんは2006年に鳥取市内から智頭町に移住し、町の「人づくり塾」に参加した。

地域に知り合いがいなかったので、まずは「森のようちえん」について勉強するグループを作り、仲間を作っていった。そして、先進事例として愛知の「ねっこぼっこ」の副園長さんを町に招き講演会を開いた。

「この講演会で、完全に火が付きましたね。翌月から親子で森の中のお散歩をするお散歩会を始めたんです。そして、翌年には「森の幼稚園を作る会」を作りました。」

2008年、町長が変わり、「100人委員会」ができた。

西村さんも参加し、森のようちえんを提案。2009年度に保育士一人分の人件費の予算がついた。町民のアイディアに町が予算を付けるという制度だ。

寺谷町長は言う。「市町村のリーダーに知恵が無ければ住民に知恵を借りればいい。それで私は町民から知恵を借りる「100人委員会」を作ったんです。自分たちの町だから、自分たちで考えて提案してください。良いアイディアがあったら予算付けますからと。その一つが森のようちえんでした。」

地元の人は森や自然は当り前になってしまっているが、東京育ちの、いわゆる”よそ者”の西村さんからすれば、智頭は素晴らしい森林がある山村で、スゴク素敵なのだ。

そして、森のようちえんが始まり、地元テレビや新聞を中心に取材が増え、半年もしないうちに京阪神や、四国から視察者が続々やってくるようになった。

「スゴイ教育だと見に来た人は言うんです。ところがスゴイ教育ではない。なんのことはない。年取った人たちが昔子どもだった頃、野山を走り回っていた。昔は皆そんな遊びをしていたんです。けれど、それが今は斬新。しかも、子どもが森に入ると年寄りが見守る。何かあっちゃいけないと。これでお年寄りの役割もできたんですよ。」と寺谷町長は言う。

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